顧客理解の第一歩。ビジネスに有効なエンパシーマップとは
2025.05.11Other

近年、商品やサービスが溢れ機能や価格だけでは差別化が難しくなってきているかと思います。真のニーズや行動背景を理解しないまま商品やサービスを提供しても思うような成果が出ないことが多くあり、顧客の感情や価値観に寄り添う「共感」が市場での差別化を図るうえで欠かせない要素となってきています。今回はそんな場合に有効なエンパシーマップ(Empathy Map)について紹介しようと思います。
エンパシーマップとは何か?
エンパシーマップとはユーザーや顧客が何を考え、感じ、見聞きし、どのように行動しているかを可視化するツールです。共感(Empathy)という言葉が示すように顧客の立場に立って感情をベースに思考することを目的とし、新規サービスやプロダクトの企画や顧客インサイトの把握などに活用することで新たな価値の創出や課題解決の糸口を見出すことが可能になります。マーケティング戦略の立案やUXデザインの初期段階などでも活用されチーム全体でユーザー理解を深めるための共有ツールとしても有効です。エンパシーマップを用いることで顧客の潜在的なニーズや感情に気づきやすくなり、より本質的な課題にアプローチするための指針となります。似た概念として「ペルソナ」がありますがペルソナが顧客像のプロファイルであるのに対し、エンパシーマップはその人物の内面や行動の“今”に焦点を当てる点が特徴です。
エンパシーマップの構成要素
一般的なエンパシーマップは、以下の6つのセクションに分かれています。
・見ること(See)
顧客の目に入るもの。競合商品、広告、SNSなど。
・聞くこと(Hear)
顧客が周囲の人々やメディアから得ている情報。影響を受ける声。
・考えていること・感じていること(Think & Feel)
顧客の内面。表には出てこない不安、欲求、希望など。
・言っていること・していること(Say & Do)
顧客の発言や行動。SNS投稿や購買行動などが該当します。
・痛み(Pain)
顧客が抱えている課題、フラストレーション、恐れ。
・得られるもの(Gain)
顧客が期待している成果や価値、満足感。
この6つの視点を整理することで、表面的な分析では捉えきれない顧客の本音や実態が明らかになります。
顧客の本音はデータだけでは見えない
顧客の本音は数値データだけでは捉えきれません。アクセス解析や購買履歴からは何が起きたかは分かっても、なぜそうなったのかという背景までは見えてこないかと思います。たとえば、商品ページの離脱が多い場合に価格やデザインだけでなく、説明が難しい、信頼できるか不安など感情的な理由が潜んでいることがあります。エンパシーマップを用いて顧客の視点で考えることでこうした見えない声に気づき本質的な課題解決へとつなげることが可能になります。
選ばれる理由をつくる
また、エンパシーマップを活用することで他社との差別化ポイントを明確に把握することが可能になります。サービスや商品が選ばれるためには単に機能や価格で優れているだけでは不十分です。顧客が本当に惹かれるのは自分のニーズと提供される価値が一致していると実感できる体験やメッセージです。エンパシーマップを通じて顧客の深層心理や価値観に迫ることでより効果的な訴求ポイントを導き出しブランドやサービスの強みを際立たせることができます。
まとめ
データでは捉えきれない本音や感情に目を向けることで顧客に響く訴求ポイントや差別化のヒントが見えてくるのだと思います。エンパシーマップを描くプロセスそのものが顧客の立場に立って考えるきっかけとなり、自分自身の中で顧客像をより具体的にイメージする助けになります。こうした共感を起点とすることで顧客に寄り添った商品やサービスの設計が可能となりその魅力を的確に伝えることができるのだと思います。いま大きく市場環境が変化する中で顧客の視点に立った価値の再定義が重要になっているのではないでしょうか?